東京マラソンから2週間後の3月12日、古河はなももマラソンに出場した。
東京マラソンの翌週にバルセロナージュネーブと仕事で出張し、2日前の9日に帰国。正直、走る気は少しも起きなかった。
気合いも入らず、緊張感もなく、スタートラインに立ち走り始めた。
オーバーペース。東京の時はキロ4分57〜58秒で走っていたが、古河ではキロ4分45秒くらいで走ったのだった。
気合いが入ってなかったからか、緊張がなかったからか、体は意外に軽くリラックスしていた。もちろん、この日のベストを尽くそうとは思ったものの、心に火が灯るほどではなかった。
30kmを超えて、なんとなく怪しくなる。いつものこと。35kmを超えるあたりで、いよいよ足に力が入らなくなってきた。
36km過ぎで仲間にパスされると、完全に心が折れた。キロ6分台。東京の記録は更新できないかもしれない。ただ仲間が抜きざまに、「キロ5分半維持すれば、サブ3.5で行けるよ」と言っていた。
そこから1kmほど逡巡して、もう少し頑張ってみようと思った。そしてたまたまエイドにあったコーラを飲むと、不思議とペースが戻った。
そうしてそこから仲間を追いかけて、再びペースは戻って言った。
もちろん、苦しい。でも足は前には出る。
ならば足を出すべきなのだ。
そう思っていると仲間の後ろ姿が見えた。
フィニッシュラインまでに追いつこう。
そう思ってキロ4分40秒くらいまでペースアップして、追った。
結局フィニッシュラインまでに仲間をキャッチできなかったが、4秒差まで詰めた。
結果は3時間27分43秒。グロスでも3時間29分07秒。公式にサブ3.5を達成した。これで一応、別府大分マラソンの出場権も手に入れたことになる。
こうして記録は更新された。
この書き方だと簡単に思えるが、もちろん難しいレースでもあった。
けれど走り終えて感じたのは、気持ちの問題は大きいな、ということ。
一度僕は撃沈して、キロ6分台に落ちた。以前ならそこで終わっていた。
けれどなんとか奮起して、結局は記録を更新できたのだ。
そこにあるのは、気持ち、気合い、そんなところだろう。
ということはまだまだ、伸び代もあるのだろう。
今回のレースで更新したのは、何もタイムだけではないと思った。
戦い方をひとつ更新した気がする。
そして何より、一度失った気持ちを取り戻したり、キープしたりする技を更新できたと思えたのだ。
まだまだ、僕は僕に挑戦できる、と思えたのだった。